荒材・ベニヤ板とダンボールを使った

舞台・学園祭の「道具」と「つくりもの」


「道具」と「つくりもの」をつくる②


・箱状の台について
人が乗り,比較的大きいしっかりした箱状の台は,いろいろなつくり方があります。単純に大きな箱そのものをつくるのはもちろん可能ですが,作業規模,使用時の移動,使用後の管理などを考えると,問題点は少なくありません。
舞台では,こういった台のことを「山台」,奧が高くなった階段状の台を「ひな段」などと呼びますが,このような問題を合理的に解決するための方法は完成されています。平台,木台,箱足(箱馬),開き足といった備品を使用するやり方で,台の広さ,高さはその規格の寸法に添うことになります。(不定形の台についてはつくることになります。「割台」といいます。)何もないところから箱状の台を作る場合でも,このやり方は非常に参考になるので紹介しておきたいと思います。

平台 裏面平台 部分平台 手前から,3×6,4×6,6×6
平台…3尺×6尺(さぶろく),6尺×6尺(ろくろく),4尺×6尺(よんろく)などの大きさで高さが4寸の平たい木製の台。ホール,劇場によって他のサイズもあります。





木台
木台…3寸角で長さ1尺の木材でできた台。上に平台を置いて台とします。







箱足 左から 1尺1寸,1尺,6寸
箱足(箱馬)…6寸×1尺×1尺1寸,6寸×1尺×1尺,6寸×1尺×1尺7寸などのサイズの木製の箱状の台。置く向きによって高さが変わるので,その上に平台を置くことで高さの違う台をつくることができます。






平台と開き足開き足と平台(6×6)開き足
開き足…平台と組み合わせて台をつくるための折りたたみの脚。2尺1寸用(中足)と2尺8寸用(高足)とがあります。






平台の高さのバリエーション 7寸→1尺4寸→2尺1寸
これらの台を使って可能な高さの代表的な組み合わせに,7寸→1尺4寸→2尺1寸→2尺8寸(1段7寸(212.1mm)=7寸蹴上げ)というものがあります。中途半端な寸法が並んでいるように思えるかもしれませんが,この組み合わせは舞台(演劇)で一般的に使われる定式寸法(じょうしきすんぽう)で,階段の高さもこれに準じています。他の道具に共通する場合もあるので,覚えておいてほしい寸法です。




つかみ平台どうしは「つかみ」で留めますあいがけ(開き足)あいがけ(箱足)
実際の場面では,複数の平台を並べて使用することも多くなります。平台どうしは「つかみ」という金具で留めます。箱足の並べ方も複数の平台にまたがって置くこと(「あいがけ」)になります。このようにできた台の上面に「地がすり」や「パンチカーペット」や薄ベニヤを張り,側面に蹴込み(薄ベニヤなど)を張って使うことになります。

劇場やホールなどにおいて箱状の台を設置しようとする場合,会場の備品で事足りてしまうことは多いようです。演劇など比較的自由な寸法で構成される空間にあっても,極力備品を利用する姿勢が必要とされる面もあります。
ただし,実際にそれらの会場を使用する場合には,その会場ならではの常識があることを知らなければなりません。これはものづくりとは全く違う次元の話です。会場及び備品は多くの職員,現場スタッフの方々が管理しているわけで,何より人間関係をきちんと保つことが大切です。会場利用者はたいていの場合「お客さま」ではないということを認識していなければなりません。
会場には,劇場のように専門性の高いスタッフが揃っている会場がある一方で,地方の多目的ホールなど専門性に乏しい職員に管理されている会場もあります。そのどちらにも特有の規則ややり方があるはずで,それぞれに誠実な対応が必要になります。礼節を欠いた態度ではなんの協力も望めないことでしょう。自戒の念も込め,ご忠告しておきます。

劇場やホールの備品はとても便利です。しかし,会場の都合や利用者の状況によっては制約がある場合もあります。現にある会場では「平台に釘を打ってはいけない」と言われ,大変困惑した経験があります。(その後,現場職員の方に状況を説明し許可をいただきましたが…。)
もし自分たちで自由にできる(…たとえば釘も打て,穴も自由に開けられるような)備品があれば,表現の幅が大きく広がることになります。会場の状況にも左右されず,学校の教室や講堂などでも使用することができる,ということになります。
もちろん,劇場やホールの備品は市販されていますから,それらを購入するという選択肢もあるでしょうが,予算の問題に加え,保管場所の問題もあります。

・箱状の台について 〜提案と作例〜 hira_pane01.pdf hako_bako01.pdf
これらを踏まえて,本項なりの箱状の台をつくるとすると,平台にあたるパネルと,箱足にあたる箱状の台を分けてつくり,組み合わせて大きな台にする,というやり方が合理的です。これらの道具は一度作ったら使えなくなるまで使うべきで,1回の使用で解体廃棄を前提としていないから,接合は釘ではなく木ねじやコーススレッドビスなどを使ってしっかり作った方がよいでしょう。また,安全面に直接関わってくる大切な道具なので1mmの誤差もないように作り上げるつもりで,精度には細心の注意を払ってほしいと思います。
箱足箱をつくる平台パネルをつくる
パネル(仮に「平台パネル」と呼ぶ)はコンパネと垂木でしっかりつくり,大きさの単位は3×6かそれ以内がよいでしょう。箱状の台(仮に「箱足箱」と呼ぶ)もコンパネと垂木でつくります。寸法は箱足と同じでも良いが,劇場やホールで平台と組み合わせて使うことは許可されにくいと想像します。手作りの道具はそれ自体自己完結するものとして作るべきです。定式寸法を意識するのであれば平台パネルを載せた全体の高さから逆算して寸法を決めます。なお,平台を使う場合,箱足は四隅に置きますが,この平台パネルでは3×6でも箱足箱は6カ所必要になる場合があるので,いくつ作るのか,材料の準備に気をつけます。
平台パネルと,それとの組み合わせで,2尺1寸,1尺4寸,1尺の高さが可能な箱足箱の作例を紹介しておきます。
使い方については十分な注意が必要です。「『道具』と『つくりもの』をつかう」の項で詳しく説明します。


階段をつくる
・階段をつくる kaidan01.pdf
階段は箱や台を並べて置き作ることも可能ですが,ひとつの独立した道具として作る方法もあります。かなりかさばる道具なので保管場所を確保するのは容易ではありませんが,一度作れば長く使えるので常備しておくのも悪くないでしょう。木材はコンパネ,薄ベニヤ以外に「貫板」「半貫」を使います。







・傾斜した床をつくる kaicho01.pdf傾斜した床をつくる
傾斜した床(舞台では開帳場,八百屋などといいます。)は,箱状の台と同様にそのものをつくることも可能ですが,形や大きさがケースバイケースであること,使用頻度の低いこと考えると,使用する寸法に合わせてつくった平台パネルと傾斜分の三角の脚を組んでつくると良いでしょう。脚は垂木でつくって貫板で筋交いを入れ補強します。










・基本的な道具で構成する空間いろいろ基本的な道具で構成する空間いろいろ
前述の平台パネル,箱足箱などを組み合わせれば様々な空間の構成が可能です。ただし,必ず補強が必要になりますので注意。「『道具』と『つくりもの』をつかう」の項で詳しく説明します。