3.利点を補い合う東西・両医学

東洋医学の考え方や、それに基づく診察から治療に至るプロセスを簡単に紹介してまいりましたが、これを現在の医療の中でどのように活用すべきか、鍼灸師の立場で述べてみたいと思います。

3-1.西洋医学のお手伝いとして期待される外科手術後の諸症状へのアプローチ

手術は成功しても何らかの後遺症を残す事があり、それに対する不満を訴える患者さんを時おり見かけます。
 この事について、ある外科のお医者さんにお聞きしたところ「出血量を最小限に止めなければならないので細かい神経や筋肉を犠牲にしなければならない事もある」と説明してくれました。まずは病気の根元となっている部分を取り除けた事に感謝し、機能回復が期待出来る症状に対してはあきらめずにリハビリ等の治療に励んで頂きたいし、鍼灸治療でもお手伝いが出来る事があります。
 当院でも手術後の諸症状に対し積極的に取り組み一定の効果を上げておりますので、少数例ではありますが以下に紹介しますので参考にして頂きたいと思います。

3-1-1.胸の手術後の肋間神経痛

肺や心臓の手術の時は肋骨を切り開きますから、その周囲の神経や筋肉にもメスが入ります。目的の病気は治っても、呼吸に応じた胸の痛みである[肋間神経痛]になる事があります。この症状で当院に来院された2人の患者さんの内、1人は完全に痛みがなくなり、もう1人も肺の病気は再発したものの痛みは軽減しております。

3-1-2.胃切除後のダンピング症候群

胃の一部、あるいは総てを切除しますと、腸の上部が大きくなって胃袋の代用器官の役割を果たさなければならないので、少しずつ何回かに分けて食べなければなりません。本来の胃袋に近い能力に回復するまでの期間、お腹の張りや痛み、胃がもたれる感じがして辛い事があります。このような一連の症状群を[ダンピング症候群]といい、胃の手術を受けた患者さんは体験していることと思いますが、早く治さないと体力の回復も遅れてしまいます。当院にこの症状で来院された2人の患者さんの内、胃もたれを訴えていた方は順調に回復しましたが、もう1人の激しい腹痛の方は、病院の鎮痛剤と鍼灸の併用で何とか痛みが治まっているのが実状です。

3-1-3.大腸手術後のケアー

食生活の欧米化によって大腸の病気になる確率が高くなり、手術によって病巣を除去しなければならない患者さんが増えているようです。主治医から、手術を進められても術後の経過が思わしくなかった例を聞かされるような事があると臆病になりがちです。疑問点は担当医に納得の出来るまで説明して頂いた上で、積極的に手術に臨むべきでしょう。術後のケアーに対して僅かではありますが、鍼灸治療でお手伝い出来た2人の症例がありますので紹介します。

64歳の女性が、「2年半前に大腸の手術を受けてから食後の腹満と下肢の痺れが治らない」という症状で当院に来院されました。腸の蠕動運動と下肢の血流を改善する目的の鍼灸治療を1ヶ月間、7回行って前述の症状が治りました。
 83歳の女性は8年前から膝の痛み等で当院で治療していましたが、5年前に大腸の手術後、人工肛門を使っています。現在でも月3回、健康管理の為に転居先の東京から当院に来院され、「全身の状態を見てもらい軽度の症状を鍼灸で改善しているので安心できる」と話しています。人工肛門に馴染むまでに苦労する事もあるそうですが、この方の場合は手術を担当した大学病院に特別な外来があって指導を受けているそうです。このような指導を受けられない時は[オストミーセンター]という専門の施設がありますので、主治医の先生に相談してみてはいかがでしょう。


私たち鍼灸マッサージ師は、東洋医学だけではなく西洋の基礎医学を勉強して資格試験に合格して公的な免許が与えられています。専門医のような詳しい知識はありませんが、簡単なアドバイスなら出来ます。都道府県の業団が主催する[生涯学習セミナー]や各種関連学会に積極的に参加すると共に、最新の医療情報を入手し日進月歩の医療界から取り残されないように努力しております。病気や健康に関する不安や悩みに対し親身になって解決策を検討しますので、遠慮なくご相談下さい。


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