
様々な種類の焼却炉を−主に最大能力で−操業した時に見られる、塩素含有量とダイオキシン排出量に関する、米国機械工学会(ASME)の研究報告書の概要と要約全部についてここに掲載する。この報告書は、焼却炉中での塩素含有量とダイオキシン生成にの関係(無いこと)を示した、最新の全世界規模での科学的な証拠である。
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本研究は、塩ビや食塩を含むゴミ中の塩素量やゴミの成分が、ゴミ焼却炉の排煙中の PCDD/F (ポリ塩化ジベンゾパラダイオキシンとポリ塩化ジベンゾフラン)の濃度に関係しているかどうか調査したものである。この研究は、排出係数を明らかにしたり、制御システムを評価したり、また排水中や固体残査中のPCDD/F濃度の関係を評価するものではない。得られた数値は、ほとんどがフルスケ−ルのテストによって得られたものである。PCDD/Fの化学組成が、考慮に入れなければならない重要な交絡因子を見極めるのに役に立っていることを提唱するため、独創性に富んだ実験室での結果が使用されている。
1,900以上の都市ゴミ焼却炉【MWC】、有害廃棄物の焼却炉【HWI】、医療廃棄物の焼却炉【MWI】、有害廃棄物の焼却ボイラ−【HWB】、セメント・キルン【CK】、バイオマス燃焼炉【BMC】そして研究室スケ−ル、ベンチスケ−ル、パイロットスケ−ルの燃焼炉【LBP】の内から選ばれた、その多くは多重に設備を備えている169の施設で、排煙中の PCDD/F の濃度と焼却物中の塩素含有量、あるいはその代わりとして制御されていないガス相の塩素濃度との間に、関係があるかどうか調査するための解析が行われた。焼却物中の塩素濃度は、多くのバイオマス燃焼炉【BMC】での0.1%以下から、いくつかの有害廃棄物の焼却炉【HWI】に見られる80%以上までに分布していた。大部分の他の焼却炉での焼却物中の塩素濃度は、これらのふたつの極値の間にあり、そのカテゴリー別におおよそ8:1の間隔で分布していた。
この得られたデ−タは、エラ−や統計上の異常値が無いかどうか注意深く検査され、共通の標準条件に統一され、そして、PCDD/F組成の特徴や濃度に変化があるかどうか調べるために解析された。分析精度より大きい変化は、廃棄物中あるいは排煙中の塩素濃度に関係しているかどうか判定するため、細かく調べられた。
PCDD/Fの指紋的特徴の詳細な解析は、クラスター分析により行われた。同じ焼却炉ファミリ−(例えば、都市ゴミ焼却炉【MWC】、有害廃棄物の焼却炉【HWI】など)での同一サンプリング場所で得られたデ−タの指紋的特徴は、その焼却が多数の検出限界以下のデ−タを生み出さなければ、ほとんど同じであった。いくつかの設備では、サンプリング位置の間で、PCDD/Fの測定誤差を上回る指紋的特徴の差が認められた。塩素濃度の違いにより、PCDD/Fプロフィ−ルの顕著な変化は見られなかった。
正準相関分析と単純な線形回帰分析法を組み合わせて使用した全体的なレビュ−では、統計学的に意味がある傾向を検出するに充分な同時デ−タがある90の設備の大多数(80%)で、焼却物中の塩素含有量とPCDD/Fの濃度には統計的に顕著な関係は認められなかった。塩素含有量が増えた場合、11%の設備でPCDD/Fの濃度が増加する傾向が見られ、9%の設備でPCDD/Fの濃度が減少する傾向が見られた。
分散分析[ANOVA]と燃焼工学モデルを組み合わせ、多変量線形自己回帰分析により、塩ビ、混合プラスチックあるいは食塩を焼却物に加えた3種の主要な都市ゴミ焼却炉での条件を制御した実験が解析された。2種の実験では、PCDD/F濃度と塩素濃度の間に統計的に重要な関係は発見できなかった。3種目の実験では、塩ビを都市ゴミ焼却炉中の塩素濃度が普段の時の量の約10倍になるまで加えた時、初めてこの間に関係が見出された。この一連のデ−タには、厳しい自己相関(実験の間の記憶効果)が示されており、認められた効果は、加えられたもの以外に何か別のものが原因となっている可能性がある。
同様な手法で、カナダ環境保護局、米国環境保護庁、New York州エネルギ−研究開発当局及び五大湖周辺地区知事協議会の支援で行われた、多くのパラメ−タ−を変えた都市ゴミ焼却炉の実験結果が解析された。燃焼生成物中のPCDD/Fの濃度と被燃焼物中の塩素含有量には、これらの研究から得られたデ−タでは、統計学的に有意な関係は何も見付からなかった。
都市ゴミ焼却炉と同じように、医療廃棄物焼却炉の15%に於いても、被燃焼物の塩素含有量を増加させると排煙中のPCDD/F濃度が増加し、同焼却炉の7%では減少している。
有害廃棄物の焼却炉に於いても、焼却する廃棄物中の塩素濃度とPCDD/F濃度の間には、全体として明確な関係は見られなかった。個々の装置の検証により、塩素含有量が10対1の範囲で、最高80%の塩素含有量のものがテストされていると判明したが、塩素濃度とPCDD/F濃度には全く関係が見られなかった。塩素濃度が増加すると18%の有害廃棄物焼却設備ではダイオキシン発生量の増加が見られたが、18%の設備ではダイオキシン発生量は減少していた。
セメント・キルンでは、塩素含有量を増やしても、排煙中のPCDD/F濃度ははっきりした増加を示さなかった。これは驚くに当たらないことである。なぜなら、天然のアルカリ性物質を除去し、連邦と州の建築基準を満たすポルトランドセメントを生産するため、塩素を加える事は良く行われているからである。
廃棄物燃焼ボイラ−では、塩素含有量が増加すると、PCDD/F濃度が減少するという関係が見られた。しかし、ボイラ−のデザインや一緒に燃やす燃料の差が、この発見結果と交絡している。
バイオマス燃焼炉はPCDD/Fを生成するが、しかし一般的な傾向が有るかどうか判断するためのPCDD/Fと塩素含有量を同時に測定したデ−タはほとんど無い。食塩を含んだ木材の代わりに、塩素濃度がかなり高いスラッジを用いた試験では、排煙中のPCDD/F濃度が減少する傾向が見られた。
いくつかの研究室での実験では、特定の条件下では、塩素含有量と燃焼生成物中のPCDD/F濃度に関数関係が認められるが、その影響は、燃焼炉のデザイン、操作条件やコマ−シャル・スケ−ルの燃焼炉で行われる排出物測定で通常見られるデ−タのばらつきなどの交絡因子の影響に比べ、はるかに小さいものである。
塩素含有量が、ゴミ燃焼炉から発生する排煙中のPCDD/F濃度にどんな効果を与えようとも、それは、こういった他の変数でマスクされている。ゴミ焼却炉排煙中のPCDD/F濃度の目に見える変化、また着実な改善が、ゴミ中の塩素含有量を減らすことで実現するとは思われない。
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デ−タベ−ス中にある169の施設で得られた、1,900以上のPCDD/Fに関する試験結果の中で、90施設中の107装置でPCDD/Fと塩素が同時に測定されていた。72の設備(80%に当たるが)では、被燃焼物中の塩素濃度と排煙中のPCDD/F測定値には統計学上意味の有る相関は見られなかった。明らかに相関が認められたデ−タ集団では、10の集団で塩素濃度が増加するとPCDD/Fの濃度が増加し、8の集団では逆に減少していた。
大部分の場合について、塩素含有量とPCDD/F濃度の増加が同時に起こっておらず、また逆にPCDD/F濃度が減少するケ−スがいくつか見つかった事は、塩素含有量が燃焼炉排煙中のPCDD/F濃度にどんな関係が有ろうとも、その影響は他の原因として働く要素の影響より弱いものである事を示している。商業規模の燃焼炉では、塩素がPCDD/Fの濃度に与えるどんな影響も、大気汚染制御システム[APCS]の温度、燃焼灰の化学的性質、燃焼条件、測定誤差や局部的な流動層の形成によりマスクされている。
燃焼装置に投入されるゴミ中の塩素の量や化学構造が、燃焼炉の出口、大気汚染制御システムの流路あるいは煙突で測定したガス中のPCDD/F濃度に直接関係していると言う仮説は、本研究で解析された多大なデ−タにより妥当と認められない。
一般に塩素濃度の低い化石燃料を燃やす燃焼システムでは、普通低いPCDD/F濃度を示す。これとは反対に、有害廃棄物や都市ゴミを燃やす燃焼システムでは、より高い塩素濃度である可能性があり、しばしば高めのPCDD/F濃度を示す。これら観察結果から何人もの人が、発生するPCDD/F濃度が燃料の塩素濃度により決まると言う仮説を立てるようになっている。いくつかの監督官庁、公共の利益を求めるグループおよび個人が、燃焼炉への塩化物混入を制限するよう呼びかけている。
そのような規制を公布する前に、仮説を立てられた関係が現場での実験で確認されるかどうか判定するため、利用出来るデ−タを慎重に吟味するべきである。
本研究の目的は、現存するテストデ−タと情報を使用し、廃棄物中の塩素含有量、特に PVC,(塩ビ)、混合プラスチック、及び食塩が、廃棄物燃焼設備の生成ガス中のPCDD/F濃度に及ぼす影響を調査する事であった。
本研究は、以下の事柄を行うつもりで実施したものではない:
本研究は、意識的にフルスケ−ル設備の情報に焦点を絞って行われた。都市ゴミ、医療廃棄物、有害廃棄物やバイオマス(農産及び林産廃棄物)の燃焼炉から、入手可能なデ−タが集められ、そして解析された。この研究の一部として、新しくデ−タを取る事は行わなかった。
しかしながら、研究室スケ−ル、ベンチスケ−ル及びパイロットスケ−ルのデ−タが、フルスケ−ル設備の挙動を理解し、小スケ−ルでのデ−タとの関係を評価するため再吟味された。全ての公表された研究室スケ−ル、ベンチスケ−ル及びパイロットスケ−ルの試験結果や理論的研究を包含させようとする試みは行わなかった。それよりむしろ、頻繁に引用される原典と定義されているような、独創的な報告が引用されている。既存デ−タを使って評価出来る現象のみが、本報告に関連有るものとした。従って、既存研究報告の限定(灰中の触媒化学物質類(銅や鉄)の記載の無い報告、物質収支が取れてない報告、デ−タが不完全な報告等の排除)が、本報告では行われている。
標準化されたデ−タの完全なリストが付属資料Cに記載されている。更なる解析を行おうとする人には、これらデ−タを使用する事を推奨する。
デ−タは、協会組織内の情報源、オリジナルの試験報告書、また公開されている文献に記載された要約から収集された。PCDD/F、塩素およびそれに関連した工程情報は、都市ゴミ焼却炉【MWC】、医療廃棄物焼却炉【MWI】、有害廃棄物焼却炉【HWI】、有害廃棄物の焼却ボイラ−【HWB】、セメント・キルン【CK】、バイオマス燃焼炉【BMC】、及び研究室スケ−ル、ベンチスケ−ルそしてパイロットスケ−ルの燃焼炉【LBP】に関するデ−タ・ベ−ス中に集録された。
全てのデ−タ・ベ−スへの入力デ−タは、転写とデ−タ整理によるエラ−がチェックされ、統計学的異常値には付箋が付けられた。デ−タは、米国環境保護庁の標準条件(例えば、20℃,1atm,7%酸素存在下、乾燥状態)に標準化され、共通単位(ppmdv,mg/dsm3,ng/dsm3等)で表記された。化学平衡や化学速度論で必要とされるため、PCDD/Fの濃度は、統計学的解析のためナノグラム(ng)(質量)よりモル(moles)を用いて表記された。同様の理由で、異常デ−タによる不都合な統計的影響を最少にするため、排出量測定値と塩素濃度の対数が評価に使われた。
中心となる研究課題(ゴミ燃焼炉の塩素濃度と排煙中のPCDD/F濃度に関係があるのか、という課題)に取り組むために、ふたつの客観的仮説が検証された。それは、以下のふたつである。
PCDD/Fの異性体や同族体の分布(指紋的分布)が、塩素源が同一で塩素存在量が変った時、変化するか?
そして
被燃焼物中の塩素濃度が変わった時、排煙中のPCDD/F濃度が変るか?
もし、これら設問の双方にノ−の回答が出れば、排煙中のPCDD/F濃度と被燃焼物中の塩素濃度に識別し得る関係が無い事になる。
上記設問に客観的に答えるため必要な統計学的解析は、まず最初に個々の装置レベルで実施され、そしてそれから近似した設備のグル−プで行われた。交絡変数(すなわち、サンプリングの位置、排煙の温度、意図的な実験条件の変更、有機塩化物あるいは食塩の添加、炉のデザインの違い等)は、全ての解析に於いて可能な限りコントロ−ルされた。
PCDD/F分布の指紋的特徴を解析するために、クラスター分析が行われた。もしクラスター係数が、95%の統計学的信頼性のレベルで、PCDD/Fのサンプリング時につきもののエラ−や不確実性により、また分析方法により説明される値よりも大きかったなら、指紋的特徴に違いが有るとみなされた。
量的変化の判断は、明らかな傾向を確認するためデ−タをグラフ化することで始められ、これに続いていろんな方法で行われた。正準相関解析、通常の最小2乗法や遅延自己相関線形回帰分析および主成分分析[PCA]が、統計学的に顕著な関係を確認するため使われた。塩素や温度のような観察された濃度変化に寄与している可能性があるパラメ−タ−は、分散分析[ANOVA]を使って評価された。 (PVC (塩ビ)が加えられているかいないかといった)影響の有無を示す変数のブロック化が、操業パラメ−タ−の漸進的変化とANOVA法の構成を明らかにするため行われた。連続型変数が、温度や排煙中の酸素濃度と言った連続パラメ−タ−を明らかにするため使われた。各々の係数の統計的有意性により、対応する変数が重要な影響を与えるかどうか決定された。
この研究のために集められたデ−タは、廃棄物燃焼炉の代表的な種類(複数)から得られたものである。被焼却物の塩素濃度は0.1%から76%以上であり(Fig.1)、そして大気汚染制御システム[APCS]前で測定された塩酸ガス濃度は、酸素存在量7%で20から8,000ppmdv近くに渡って分布している(Fig.2)。塩素濃度のこの範囲と、PCDD/F異性体分布の違った性質は、これらデ−タをまとまった形で解析する事を不適当なものにしている。そのため、デ−タは燃焼炉の種類ごとに解析された。
デ−タベ−スにある63の都市ゴミ焼却炉設備から得られたデ−タが、本研究のこの部分に用いられた。いくつかの設備は、PCDD/Fの生成に注目したパラメ−タ−試験の対象となっていた。多数の添加試験が、PCDD/F濃度と塩素との関係を明確に判定するため、混合プラスチック・塩ビ・食塩を燃焼物に加えて行われていた。最後に、多くの試験にはいくつかの塩素添加率の測定も含まれていた。
制御されていない塩酸濃度(すなわち、酸性ガス制御システム前の塩酸のデ−タ)を測定せずに行われた添加試験に関しては、被燃焼物組成の段階変化を表す変数が、解析におけるこれら意図的介入を確認するため使用された。
行われたいくつかの試験が、わずかといえない試験法の曖昧さで行われた大部分の試験と明らかに違っていることが、各々の設備で得られた個々のPCDD/Fの指紋的特徴の比較により分かった。
これらの違いは、通常違った数の検出限界以下[BDL]の結果に原因するものである。残りの指紋的特徴の違いは、違った場所(つまり、ボイラ−、排出口、煙道等)で試験が行われていることに関係している。これらの違いを明らかにした後では、操業条件や焼却物の変動が通常の範囲に有れば、塩素含量を増やしたり減らしたりする添加試験を入れても、PCDD/Fの指紋的特徴に測定出来るような変化は無かった。また、違った設備の間で、PCDD/Fの指紋的特徴にほとんど差は無かった。
それゆえ、都市ゴミ焼却炉【MWC】設備では共通した指紋的特徴が有り、また塩素含有量の変化がこれら都市ゴミ焼却設備の排煙中のPCDD/F組成に測定出来る程影響を及ぼさない、と結論付ける事が出来る。
都市ゴミ焼却炉設備で発生するPCDD/F量については、パラメ−タ−を変え、また塩素を添加する研究が、塩素添加条件を変えることの影響を調べる上で、特に有用である。18の設備から得られたデ−タについて、ひとつひとつ詳細な統計学的解析が行われた。特定の場所で測定されたPCDD/F濃度と、都市ゴミ焼却炉で通常見られる塩素の変動、つまりプラスチック・塩ビ・食塩の添加による塩素の変動には、識別出来る程の関係が無いという結論になった。塩ビ、食塩そして石灰を添加したHorsholmの研究では、デ−タは強い自己相関関係が有り(つまり、先行デ−タで後の実験デ−タの大部分を説明出来るので)、再現実験結果と矛盾する、説明出来ない統計学的異常値を含んでいる。そのため、塩ビや食塩の添加と排煙中のPCDD/F濃度の関係についての結論は、この統計学的に計画された実験から実際に得る事は出来ない。Wurzburgによるもうひとつのフルスケ−ル設備を使った研究では、最新鋭の設備で都市固体ゴミを燃やした時と、その設備で7.5%また15%プラスチックを混入して都市固体ゴミを燃やした時とでは、排気中に通常認められるPCDD/F濃度に全く違いはなかった。塩ビと排煙中のPCDD/F濃度が、世界的に見て関連しているという説の反証例のひとつが、Pittsfieldの実験で提供されている。塩ビフリ−の材料の焼却は、特定個所での焼却生成物中のPCDD/Fの種類も量も、一般ゴミ焼却時や塩ビを添加したゴミ焼却時と、意図的な操業条件の差の調整後は同じであった。集計した都市ゴミ焼却炉デ−タベ−スの総括的な解析でも、交絡因子を制御すると、被燃焼物中の塩素量と排煙中のPCDD/F濃度に統計学的に有意な関係を見つけることは出来なかった。
以上要約すると、通常見られる塩素含有量の変化だけではなく、都市固体ゴミの混合プラスチック量を調節したり、塩ビや食塩の添加によって意図的にゴミ中の塩素含有量を増減しても、都市ゴミ焼却炉排煙中のPCDD/F濃度に識別出来る影響は出ない。
排煙のPCDD/Fの組成や量に、塩素がほとんど変化を引き起こさなかったことが判明したので、ゴミ中の塩素と都市ゴミ焼却炉の排煙中のPCDD/F濃度に、首尾一貫した識別出来る関係は存在しないと結論される。
デ−タベ−ス中の31医療廃棄物燃焼施設での個々のサンプリング箇所で、PCDD/F組成の比較に使用される分布の指紋的特徴は、ほぼ同じであった。大気汚染制御装置前後での指紋的特徴は時には異なっていたが、その違いは塩素含有量とは関係が無かった。
焼却廃棄物中の塩素含有量と、医療廃棄物焼却炉の排煙中のPCDD/F濃度には、識別出来るような関係は無かった。デ−タベ−ス中の医療廃棄物焼却炉デ−タを全て組み合わせると、塩酸の測定値で表される塩素含有量とPCDD/Fモル濃度の対数には統計学的に有意な負の関係が存在する。これはすなわち、もしこの関係が正しいなら、医療廃棄物焼却炉に投入される塩素量を増やすとPCDD/F濃度が減少することになる。現在のPCDD/F生成理論では、この負の関係を科学的に弁明する説明が出来ない、恐らくこの関係は偶然に得られたものであり、本当の効果ではないものと見られる。
以上の解析結果をふまえると、医療廃棄物焼却炉の排煙中のPCDD/F組成あるいは濃度と、焼却廃棄物中の塩素量との間に、統計学的に有意な関係は認められない。
ダイオキシンの指紋的特徴は、全ての有害廃棄物焼却炉に於いて本質的に同じであり、それらのデザイン、使われている大気汚染制御システム、あるいは焼却物中の塩素濃度とは無関係である。しかしながら、2,3の指紋的特徴が違っている。特徴の違いのほとんど大部分は、異なった数の検出限界値以下のダイオキシン異性体によるものである。塩素とダイオキシン骨格の指紋的特徴配列の間には何の関係も無かった。
排煙中のPCDD/Fの総モル濃度と焼却物中の塩素パ−セントの関係を表すのに、散布図(相関図)が使われ、いろんな関係が見つかった。28装置中の18装置ではPCDD/Fと塩素の数値には全く統計学的に有意な関係は示されていない。5つの設備では、焼却物中の塩素濃度が増加した時、PCDD/F濃度が増加しているが、残り5つの設備では減少している。
デ−タベ−ス中にある5つの有害廃棄物焼却ボイラ−【HWB】でのPCDD/Fの指紋的特徴は、プラント毎に違っている。これらの焼却炉は、有害廃棄物のみを燃やす改造したパッケージボイラ−から10%の液状有害廃棄物と粉末石炭を一緒に燃やすボイラ−にまで及んでおり、相違はおそらく焼却炉デザインの違いによるものである。PCDD/Fのモル濃度の対数と焼却物中の塩素パ−セントの散布図(相関図)では、塩素濃度が増加すると排煙中のPCDD/F濃度が減少するという、統計学的に有意な傾向を示している。ボイラ−デザインの差が判っており、またこの関係を説明するPCDD/F生成理論は現在存在しないので、これは偶然に得られたデ−タであろう。
セメント・キルン【CK】では、クリンカ−・トン当たりでの添加塩素量と生成PCDD/F濃度に関係は無かった。セメント製造工程の差による指紋的特徴は、曖昧に定義された製法よりもむしろ距離係数により相違している。つまりキルンの型式が、(例えば、長い湿潤区間が有る、長い乾燥区間が有る、プレヒ−タ−装備、プレヒ−タ−及びプレ燃焼器が装備されている等の差が)指紋的特徴の差を作り出している。ガス中のPCDD/F濃度は、概して被燃焼物中の塩素と意味の有る関係を示さなかった。統計学的に有意な結果を示した1つのプラントでは、塩素添加量が増加するとPCDD/F濃度が減少する傾向を示した。恐らくこれは偶然出たデ−タであり、実際に起こっている現象ではないであろう。
有害廃棄物焼却炉では、排煙中のPCDD/F濃度と塩素との間に関係が無いが、いくつかの独立した設備では焼却物中の塩素が増加するとPCDD/F濃度が増加したり減少したりしている。有害廃棄物焼却ボイラ−では、添加塩素量を増加させた時排煙中のPCDD/F濃度が減少する傾向を示したが、これは実際に起こっている現象であるよりも、焼却炉のデザインの違いよるものであろう。セメント・キルンでは、焼却物中の塩素量を増加させても排煙中のPCDD/F濃度に影響しないか、あるいは減少する傾向を示した。
デ−タベ−ス中のバイオマス燃焼炉のデ−タでは、PCDD/Fの組成も濃度も、PCDD/Fと塩素を同時に測定した情報が有る5カ所のプラントでの、7種類のシステムに於ける各々のデ−タの範囲で、被焼却物中の塩素含有量と関係が認められない。Northwood,B.C.で行われた故意にPentacholoropenol[PCP]を添加した研究でさえ、最も添加量が多かった時に2種類のPCDD/F同族体の生成を検出しただけである。Elk Fallsの研究に於いても、塩分を含む木材廃棄物に更に塩分濃度の濃いパルプミルのスラッジを添加しているが、PCDD/F濃度は減少した。デ−タベ−ス中の別の3種類のバイオマス燃焼炉デ−タでは、同じような排煙中のPCDD/F濃度を示している。しかしながら、バイオマスの塩素含有量は測定しておらず、塩酸の同時測定値も得られていない。それゆえ、これらの試験値から、PCDD/F濃度と塩素との関係について結論付けることは出来なかった。
バイオマス燃焼炉での試験では、被焼却物への塩素添加は、個々のプラントでの排煙中のPCDD/F濃度に影響を与えていないが、ひとつの設備では、パルプミルのスラッジがより塩分濃度の低い木材チップの代わりに使われた時、PCDD/F濃度が減少する傾向を示した。
研究室規模、ベンチスケ−ル、パイロットスケ−ルの燃焼炉 [LBP]
研究室規模,ベンチスケ−ル、パイロットスケ−ルの設備では、ガス相のPCDD/F濃度と塩素の添加率との間にいくつかのはっきりとした傾向を示した。研究室規模の管状炉試験では、PCDD/F生成は塩酸濃度と無関係であるが、Cl2濃度は都市ゴミ焼却炉で通常測定されるCl2濃度の5倍の閾値を越えるとPCDD/F濃度を増加させる。ベンチスケ−ルの流動床燃焼炉の結果もまた、PCDD/F濃度を増加させる効果を生み出す塩素の閾値がある可能性があることを示している。PCDD/Fの生成が温度によって影響を受けると言う確固たる証拠が見付かっている。パイロットスケ−ルでの都市ゴミ焼却炉の試験では、塩素濃度が都市固体ゴミ中に通常認められるレベルをはるかに越えるまでは、塩素がPCDD/F濃度を上昇させる効果は認められていない。
研究室規模、ベンチスケ−ル、パイロットスケ−ルの燃焼炉の試験結果は、メカニズムの研究には有用であるが、フルスケ−ル設備の性能を必ずしも再現していない。研究室規模、ベンチスケ−ル、パイロットスケ−ルの燃焼炉設備は、フルスケ−ル設備と流動状態、時間−熱履歴、燃焼物の物理的特徴を同時に一致させる事が出来ない(つまり、これらの炉で使われる燃料は粒径を揃えなければならず、またペレットにしておかねばならない)。研究室規模、ベンチスケ−ル、パイロットスケ−ルの燃焼炉のデ−タは、フルスケ−ル設備の試験結果を解釈するため補助的デ−タとして慎重に使用されるべきである。研究室規模、ベンチスケ−ル、パイロットスケ−ルの燃焼炉設備で観察されたどのような現象も、偶然に得られたデ−タではないことを立証するため、フルスケ−ル設備での確認試験が必要である。
本報告は、排煙中のPCDD/F濃度と被燃焼物中の塩素濃度の関係を評価してきたが、塩素濃度と排水(例えば、残査冷却水、スクラバ−排水等)中のPCDD/F濃度との関係、あるいは設備から放出される固体残査中のPCDD/F濃度との関係については、充分なデ−タが得られておらず、何か発言するポテンシャルは無い。
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付属資料Cとこの報告書の基幹部分に、他のPCDD/F生成と、大気汚染制御システムの性能問題の検討に使える情報が大量に存在する。この報告をこのような問題を検討する出発点として使って頂ければ幸いである。
もし将来このような研究が行われる事になるなら、何人かの研究者より認められている各実験間のメモリ−効果を最小限に抑えるため、異なった試験条件での実験の間に十分な安定化時間を取るよう実験は設定されるべきである。少なくともこの問題の基本的な統計処理を容易にするため、操作条件の変更と実験操作の開始との間に、同一時間を経過させるべきである。全ての試験結果の報告書には実際の操作条件が完璧に記載されるべきである。そうすれば実験は役立つものとして残り、私たちの理解の範囲が広がり、また新しい理論がテスト出来るからである。最後に、排出される全ての固体、液体、気体の測定を同時に行い物質収支を取れば、実験誤差の定量化が出来、またPCDD/Fの破壊(生成阻止)と媒体による移動を区別出来るようになるであろう。
米国機械工学会,1995年10月
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最新更新:1998年3月31日