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<始まりは彼らの食生活>
昨今の日本におけるワインブームは第5期に相当するらしいが、従来までとは異なり一般的な日本の食生活に
溶け込むように安くて美味しいワインを求める動きが出てきていることは喜ばしい限りである。しかし、長年に亘り
食生活の主役を担ってきたヨーロッパにおける、特に地中海を中心とするラテンの国々におけるワイン文化とは
まだまだかなりの部分でその違いに気付く。これが僕がこの10年に亘りイタリアを中心とした地中海の友人たちと
交流を深めてきた際に感じてきた率直な感想だ。
彼らの食生活を見てみると、「食」へのこだわりは相当なものがある。近年の日本におけるコンビニ弁当やデパート地下街の
お惣菜といった利便主義や効率至上主義から始まった食文化の崩壊とは対極をなす価値観がそこには見て取れる。
それは、行き着くところ、家庭のあり方を反映したものなのかも知れない。
彼らは腐敗した社会や政府やコミュニティーなど当てにはしていない。
それよりも家族や信頼できる友人を何よりも大切にする。定時になればさっさと家路を急ぎ、
家族の待つ家へと向かう。最近は共働きが多くなったことを受け、男尊女卑の考えが蔓延っていた
イタリア社会にもだんだんと家事を共同で行なう風潮が出てきている。そういう変化はあっても、
家庭での料理をおろそかにするようなことはほとんどない。美味しいものを家族で味わう喜びを彼らは知っているからであろう。
そういう食文化の下では、スーパーマーケットやコンビニなど流行るはずもなく、
ましてやアメリカン・ファーストフードなど、旅行者へのサービスとくらいにしか考えていない。これは本当の話だ。
彼らはパンならパン屋で、肉なら肉屋で、チーズならチーズ屋で、各々お気に入りの店に出向いて買い物をする(イタリア人だから、当然その都度店の主人や
おかみさんと立ち話に花が咲くことになる)。そこには上手い具合に需要と供給のバランスが取れていて、新鮮なものがいつでも
安く買えるようになっているのだ。ワインとて同じこと。
地元のワインが地元の料理に一番合っていると主張する輩がめっぽう多いのは、なにも長きに亘り都市国家の下で栄えてきたことによるお国自慢ばかりではなく、
「食」へのこだわりが作り上げた郷土料理とワインの融合に他ならない。地元の料理に一番合うワイン作りの探求が
ローマ時代以来培われたワインづくりの基本になっているのであろう。
イタリアの豊かな食文化になくてはならないワインとはいかなるものか、その答えを見つけるために僕のワイナリー巡りの旅は始まった。
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